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それぞれの『アフタースクール』

大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人。まさしく旬の3人が顔を揃えた映画『アフタースクール』。デビュー作『運命じゃない人』によってカンヌ4冠を授賞した内田けんじ監督の待望の新作となる今作、この春一番の話題作である。3人に加えて常盤貴子や田畑智子ら、人気・実力を兼ね備えた豪華な面々による予想不可能かつスリリングな展開は、観る者の期待を決して裏切らない。建前も裏も、友情も守るべきものもある大人たちの”放課後”を見逃すな!

まさしく同級生のような3人が語る『アフタースクール』

 『アフタースクール』は、大人たちそれぞれの放課後についての物語である。中学校の“同級生”として登場する大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人の3人。学生時代から演劇に魅せられた彼らがこの作品で一同に介した――まるで本当の同級生たちのように。学生時代の思い出から撮影中の苦労、そして映画の隠れたテーマまでを、この3人が楽しそうに語る。

学生時代から佐々木さんのファンだったんです――大泉洋

 「学生時代から佐々木さんの舞台は観ていたんですよ。だから今回は佐々木さんと一緒になって、そのことをいつ話そうかなと思いながら撮影していました。撮影の後半は2人きりになることが多くなったんで、ようやくそこでカミングアウト(笑)」
 そんな大泉さんに、佐々木さんが答える。
「僕が忘れていたセリフまで覚えてくれていたもんね」
 大学時代に北海道で演劇を始め、大学の仲間による演劇ユニット・TEAM NACSを結成した大泉さん。劇団・惑星ピスタチオに参加していた佐々木さんの公演をビデオで何度も観ては研究していた。
「それがすごく楽しみでした。劇団の帽子まで買っていましたもん。ピスタチオ・キャップね」と大泉さんが言うと、「ありがたいお話です(笑)」と笑う佐々木さん。

また、堺さんは高校生の時に演劇に出会い、大学在学中に劇団・東京オレンジの旗揚げに参加。筋金入りの演劇青年である。
「さすがに北海道には行ってませんけれども(笑)」と堺さんが謙遜すると、「でもやっぱりずっとお芝居をしている人だということは知っていましたよ。僕ら、めちゃくちゃな演劇青年ですからね。この3人で一緒にやれるのは本当に嬉しかった」と大泉さんが返し、佐々木さんが続けた。「そうだね、こうして出会えて良かったね」

 この3人が揃った『アフタースクール』。今作はカンヌで高い評価を受けた内田けんじ監督の第2作でもあり、その面からの注目度も非常に高いものがある。佐々木さんが嬉しそうに語る。 「内田監督の前作『運命じゃない人』が僕にとってはものすごく面白い作品だったんです。パンフレットはもちろん、シナリオまで買い揃えました。だから今回この映画に参加できたことは本当に嬉しかったし、すごく光栄なことでしたね」

『内田けんじ監督の新作に参加できたことが嬉しい――佐々木蔵之介

 前作でも話題を集めた内田監督の綿密かつ予想も付かないストーリー展開、そして芸の細かい演出の妙は、今作でも十分に発揮されている。そのスリリングな内容は、出演した彼ら自身にとっても刺激的なものだったらしい。 「最初に観たときは、時間を忘れて観てしまいましたよ。終わって初めて“ああ、そうだったのか!”と分かってくる。ストーリー展開の巧みさはまさしく内田監督ならでは」と初観時の感想を語る大泉さんに、佐々木さんが続く。 「冒険してますよね。僕も最初に観たときには驚かされました。どうなっちゃうんだろう? という感じ」

 しかし、この映画は決してスリルと謎解きだけの映画ではない。
「僕は、青春という大きなテーマがこの映画にはあるような気がしているんです。青春とか友情とか、ちょっと青臭いかもしれない内容をすごく上手く描いているところが本当に好きですね。普通に言葉で語ってしまえばクサくなってしまうようなところを、内田監督はきちんと魅せてくれる。台本を読んでいてもちょっとほろっと来ましたし、実際に映画になってみてもすごく好きなシーンがいくつかありますね」
「うん、かなり深い映画ですよね。ストーリー自体のどんでん返しもすごいし、一度ならず何度でも見て味わってほしい」

 堺さん、大泉さんが言うように、ところどころに見られる大人になった同級生ならではの描写、ほろ苦くもストレートな台詞の数々は、3人の巧みな演技とともに、ひとことでは言い難い印象を残す。
 そんな深いテーマにもかかわらず、映画の苦労は意外なところにあったらしい。
「僕の髪の毛のセットが大変だったんですよ。撮影が雨が多い時期だったんで、髪型が湿気ですぐに変わっちゃう。ヘアメイクさんが苦労してましたね」と大泉さんがおなじみのユーモラスな表情に戻って語ると、「ヘアメイクさん、苦労しすぎてスキルアップしていたもんね(笑)」と笑いを堪える佐々木さん。
 映画同様、まるで本当の同級生のように息の合ったところを見せる3人だが、彼らを繋ぐのは、やはり演じることに対する熱い想いであるように感じられる。
「僕の場合、大学で演劇に出会い、人生観が変わって、サラリーマン経験もなくそのまま来ちゃったんです。ずっと放課後が続いているような感じがあるんですね。もうちょっと、例えば佐々木さんみたいにメリハリのある人生も良かったかなあとは思っているんですけれど(笑)」と大泉さん。

この映画には、もうひとつ、青春という大きなテーマがある――堺雅人

 確かに、学生時代から演劇に魅せられた彼らの俳優としての活動は、それこそ終わらない“アフタースクール”である。大泉さんの話を受けて、「僕も大学で芝居をやってしまって、会社に入って、辞めて、劇団に入って、東京にきて…。家業を継ぐつもりだったのが、本当に放課後は演劇の仕事を続けてきていますよね。当時と比べて自分が変わっているのか、それとも変わっていないのか、それはわからないんですけれど」と佐々木さん。
 堺さんは彼らの語る“アフタースクール”に重ねるように、撮影現場の雰囲気とともに、自らのクリエイターとしての哲学を語ってくれた。
「この映画には、教室の片隅で仲の良い友達となにか企みごとをしているような感じがありました。大泉さんも佐々木さんも、そして内田監督も、みんなが大人になりきれていない部分というか、子どもの頃から変わっていない部分を持っているんだな、と。モノを作る仕事には、そういう部分がすごく大切なんじゃないかな?」
「うん、この映画はそういう空気感がいいですよね」と頷く大泉さんがさらに続けた。「その空気を、ぜひ皆さんに観て欲しいと思います」

 十分に大人でありながらもどこか少年っぽさを残す彼らの『アフタースクール』。この映画とともに、その放課後はこれからも続くだろう。

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写真=桑嶋維 取材・文=熊谷朋哉(SLOGAN)
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