『水曜どうでしょう』はバラエティーではなく、ドキュメンタリー …鈴井貴之
ただ騙されて旅してるだけ。何が面白いんだか(笑) …大泉 洋
1996年10月から02年9月までの6年間、HTB北海道テレビで放送された深夜のローカルバラエティ番組『水曜どうでしょう』。出演は番組の企画に携わる鈴井貴之、チーフディレクター藤村忠寿、ディレクター兼カメラ嬉野雅道、そして俳優の大泉洋の4人。
裏方のディレクターやカメラマンまでが時には出演者になるという、半ば常識はずれのスタイルと、バラエティーでありながら予定調和を廃した意外性の連続が多くの視聴者の視線や感情を捉え、「北海道では知らない人はいない!」といわれるほどの番組になった。
番組でミスターと呼ばれる鈴井貴之さんは『水曜どうでしょう』を「単純なバラエティーではなく、ドキュメンタリーだと思っている」という。
「4人の男が右往左往しながら旅をするそれだけですが、その様が視聴者にとってのひとつの憧れだったりするんでしょう。今の世の中、こんなに自由に旅ができる方ってなかなかいないと思うんですよね」
出演者のなかで唯一企画や構成に関わっていない大泉洋さんは、番組内のキャラクター通りに意義を唱える。
「わたしなんかはね、ただただ彼ら(他の3人)に騙されて旅をしているだけなんで、正直面白いといわれても、『失敬な!』といった気持ちがするんですけどねぇ。何が面白いんだか(笑)。ほんとに、ただ4人で旅して、ケンカしてるだけですからねぇ。我々自体が『楽しいねぇ、いいねぇ』といって旅しているのではなく、精神的に窮地に立たされたりとか、おたがいののしりあったりですからね。企画の段階では『ここへ行こうよ』なんつって、大した楽しいらしいんだけど、実際行くとかならず辛い旅になるわけです。どうしてそれが企画の段階でわからないのかと! 企画に携わらない僕としては強くモノ申したいわけですよ」
もちろんジョークではあるが、「何が面白いんだか」と胸を張って言えるところこそ、『水曜どうでしょう』の魅力なのだ。
1行だけの企画書から壮大な企画に。
計算のない自由奔放さが伝わるのかな …鈴井貴之
どんな番組でもスタートは企画から。企画の良し悪しこそが、番組の命でもあるのだが、
『水曜どうでしょう』の場合、このセオリーすら覆してしまった。
「番組初期の頃は、それこそ普通のテレビ番組のように企画書というものを真剣に作って、ちゃんと主旨を考えていたこともありましたけど。ディレクターの藤村さんは、細かく書いた企画書には目もくれず、1行だけ“どうでしょう農園”と書いたものに目を止めて、『この企画いいなぁ』なんて言って壮大な企画にしてしまう。だから、この番組は事細かに計算する必要がないんだなっていうことに気がついたところではありますね。自由奔放さというのは、画面を通して伝わっていくものなのかな、と思いますね」
そして、そもそも『水曜どうでしょう』という番組タイトルからしても、まったく計算がなかったと鈴井さんは続ける。
「単純に響きだけです。水曜ロードショーから取ったんですけど。(水曜どうでしょうは)水曜日の放送だったので。でもその頃には水曜ロードショーが金曜ロードショーに変わっていたっていうのもまったく気づかずにね」
これを聞いた大泉さんは笑い、そして一転、マジメな表情を作って続けた。
「ディレクターは番組タイトルをずっと『花と筋肉』とか、わけのわからないことを言ってたんですけど。あれが通っていたら、間違いなく“花金”と呼ばれてましたよね。水曜の番組なのに(笑)」。
北海道で“ミスター”といえば、かなりの確率でこの人(鈴井さん)になると思いますよ
…大泉 洋
いい迷惑なんですよ。日本でミスターといえばやはりあの方になるわけですからね
…鈴井貴之
鈴井貴之さんは “ミスター”の愛称で親しまれ、企画・構成作家、演出家、タレント、さらには映画監督としても3本の劇場公開作品を手がけるなどカリスマ的な人気を得ている。そして所属事務所の社長でもある鈴井さんに“ミスター”の愛称を付けたのは実は、大泉洋さんだったという。
「わたくしが鈴井さんに敬意を称しまして、とある企画の際に“水曜どうでしょうを背負って立つ男”としまして、半分以上バカにしまして、『ミスターどうでしょう』と称したわけです(笑)。それがディレクター陣にかなりよろこばれまして。しかし、どんなにバカにしてもミスターという最高の称号をつけてますからね、嫌味がないわけですよ(笑)。どんなにたくさん甘いものを食べさせて辛い思いをさせても『ミスター、甘いものをご用意しました!』っていうと、敬意を称されていますからね、怒るに怒れないわけですよ」
ところが鈴井さんは、ミスターと呼ばれることで冷や汗体験をしたこともあったという。
「いい迷惑なんですよ。まあ北海道でならミスターと呼ばれてもいいんですけど。一度東京国際映画祭に参加した時、オープニングで僕と大泉くんで赤絨毯を歩いていると、ちょうど『水曜どうでしょう』のファンの方が沿道に詰めかけてくださいまして、僕が行くと“ミスター、ミスター!”の声援が飛ぶわけですよ。そうすると、東京の報道陣は、長嶋茂雄さんはどこにいらっしゃるんだ、とザワザワしはじめたんですよ。日本でミスターといえばやはりあの方(長嶋茂雄)になるわけですからね」
東京国際映画祭でのエピソードからもうかがえるように、今や北海道で“ミスター”といえば“鈴井貴之”である。
「北海道で“ミスター”といえば、かなりの確率でこの人(鈴井さん)になると思いますよ。いやぁそうなると北海道はバカの国になっちゃいましたよ。鈴井貴之が“ミスター”と呼ばれる地域があるということは」
そう言いながらも大泉さんは「僕は基本的に社長と呼んでいます」とも言う。
「でも、『〜どうでしょう』の番組のなかで何か小バカにするときはミスターですよね」 |