『南極料理人』のほのぼのとしたコック役から打って変わり、『クヒオ大佐』では希代の結婚サギ師に扮し、また新たな顔を見せている堺雅人。"偽"アメリカ軍人のクヒオってことで、つけ鼻をして演じたが、抵抗はなかったのか?
「最初は戸惑いましたが、つけ心地は悪くなかったです。つけ鼻を付けると、表情が大きくなるみたいですね。それは演技にも影響があったんじゃないのかな?」
周りのリアクションも気になるところだ。
「みなさんもだんだん慣れてくださるみたいで、あまり違和感ないのかなと。でも僕自身は自分の顔が見えないので、時々鏡を見るとギョッとしました(笑)」
クヒオの鼻が高かったのは、アメリカ軍人になりすますために整形をしたからだが、さらに彼の華麗すぎる"偽"経歴がすごい。「父はカメハメハ大王の末裔、母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ。米軍特殊部隊のパイロット」って、ギャグにしか思えない!?
「実際のクヒオ大佐の詐欺事件を知れば知るほど、女性たちがなぜこんな人に騙されたんだろう?って思いが強くなっていきました」
確かに……。では、クヒオ役にどうアプローチしていったのか。
「クヒオは実体のない、影法師みたいな存在かもしれませんね。しのぶや春や未知子といった、騙される女性たちが踏むステップの相手というか。彼女たちの間をゆらゆらと動く存在、クヒオに僕はそんなイメージを持っています。だから、しのぶ役の松雪(泰子)さんたち女優陣の力は非常に大きかったし、いろんなところで助けられました」
監督は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八。堺は吉田の演出をこう賞賛する。
「ひとりの人間の狂気と正気の間を行ったり来たりする本作では、"虚"と"実"が描かれている。深い映画になりました。今回、吉田作品の1ピースになれてよかったです」
そう、ただのコメディではなく、ドラマの方も見応えたっぷりの本作。今まで見たことのない堺雅人をたっぷりと堪能して。