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アイブラシィ
Vol.09
いつかこんな日がくると…。ついに代打として登場である。
察しのいい読者、あるいは安齋肇さんをよーくご存知の方は、すでにここまで読んだだけで「ああ、ついに落ちたのね」とご理解いただけたはず。
落ちる…いままさに大学受験という受験生には縁起でもない言葉だが、編集者にとってもおなじ。著者の原稿が入稿日を過ぎても入らないという、顔面蒼白になる言葉である。そして、担当者にとって原稿を「落とす」ことは命を落とすのとおなじくらいの重いこと、とまではいかないが、とにかく大変なこと。
締め切りの2週間前から「そろそろです」、「もうすぐです」、「そろそろヤバイです」、「もう間に合わなくなります」と留守電にメッセージを残したり、直接話をしたりしても、原稿はついにもらえなかった。
そして校了日(もうこれで印刷所に入れる最終日)の前日。最後の催促の電話。留守電なら、ドラマに出てくるような鬼編集長を真似て「てめぇ、いつまで待たせやがるんだ! とっとと原稿をよこせよぉ!」と恫喝メッセージを残すつもりだったが、幸か不幸か本人が電話口に。
Irregular「もうダメです。今日中に原稿をいただかないと」
鬼編集長になれない私が哀願するように言うと、安齋さんは電話口で私を慰めるような口調で返す。
「ほんとうにダメそうですよね。声が死んでますもんね」
声は風邪のせい。
「死んでません。で、なんとか今日中に…」
「がんばります」
「(がんばりますって、答えじゃないじゃん)大丈夫ですか?」
「たぶんダメです。でもがんばります」
たぶんダメ…たぶん? でもがんばる? がんばるってことは原稿が入るってこと? でもたぶんダメなんだから、ダメなのか。
ということで、もしもこの原稿が掲載されていたら…
「著者の都合により連載アイブラシィはお休みします」
ごめんなさい。
「てめぇ、とっとと原稿よこしやがれ!」
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